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268. Optical measurement system for Belle II TOP counter quartz radiator (in Japanese) / Naoto Kiribe [BELLE2-MTHESIS-2019-017] Presented on 01 02 2013 MSc
2013
Nagoya university / Nagoya
2016 年開始予定のBelle II 実験は、B 中間子の稀崩壊現象を調べることで、標準理論を超える物 理の探索を行うことを目的とした素粒子実験である。私は、Belle II 実験でK= 識別を担う粒子識 別装置TOP カウンターの研究開発を行っている。TOP カウンターは、石英輻射体やフォーカシン グミラーなどの光学素子と光検出器MCP-PMT から構成される。荷電粒子が石英輻射体内を通過 する際に発生するチェレンコフ光を光学素子内で伝播させ、そのリングイメージをMCP-PMT で 検出し、粒子識別を行う。私は、その中でも石英輻射体の製作、検査システムについて研究を行っ た。 現在、全16 機のTOP カウンター量産のための石英輻射体の製造が始まっている。粒子識別の能 力は、検出される光子数の1/2 乗に比例するため、各輻射体に対して、内部透過率98.5 %/m、内部 表面反射率99.9 %などが要求される。私は、レーザーとフォトダイオードを用いた測定システム を開発した。レーザーの光路を分割し光量モニターを導入することで、十分なレーザー光量測定精 度±0:2 % を実現した。これにより、試作石英輻射体が、内部透過率、内部表面反射率の要求性能 を満たすことを確認した。さらに、量産に対応すべく、測定システムの自動化を行った。レーザー の光路は、石英輻射体表面のゆがみの影響を受けて変化する。したがって、フォトダイオード応答 の位置依存性を理解し、各レーザー入射位置に対しフォトダイオード位置をスキャンする事で、自 動化を実現した。 石英輻射体表面に欠けがあると、光子の損失や散乱が発生する。石英のような透明体の欠けは 写真に写りにくく、試作石英輻射体に対しては測定されなかった。私は、同軸落射照明を用いる事 で、欠けを写し出す撮影システムを構築した。また、O(0:01) mm2 の精度で欠けの大きさを測る画 像解析法を示した。 TOP カウンターを構成するためには、2つの石英輻射体とフォーカシングミラーを相対角度0.2 mrad 以下で接着する必要がある。私は、オートコリメータやレーザー変位計を用い、相対角度を O(0:01) mrad で制御可能なシステムを構築した。また、接着剤の吐出量制御装置を導入し、気泡の 発生を防いだ。結果として、実機サイズの試作石英輻射体に対して接着を成功させた。以上によ り、実機石英輻射体の接着の準備が整った。 本研究により、石英輻射体の量産における内部透過率、内部表面反射率、欠けの評価の準備が 整った。また、接着のシステム・手法を構築した。
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269. Performance evaluation of TOP counter using CFD readout (in Japanese) / Yuhei Ito [BELLE2-MTHESIS-2019-016] Presented on 01 02 2014 MSc
2014
Nagoya university / Nagoya
2016 年から開始されるBelle ll 実験では、B 中間子の稀崩壊を用いて、新物理の探索を行う。そ れらの崩壊を膨大な背景事象と区別するためには、高い効率で 中間子とK 中間子を識別する必 要がある。我々はTOP(Time Of Propagation) カウンターを開発し、約3 GeV/c の運動量を持つ K 中間子に対して、Belle ll 実験における入射条件の平均で、95 %以上の検出効率と5 %以下の誤 識別率を目指している。 TOP カウンターは輻射体である石英板と、その端面に設置された光検出器MCP(Micro Channel Plate)-PMT から構成されたリングイメージ型チェレンコフ検出器である。石英板、光検出器それ ぞれについては、これまでの研究で十分な性能があることが分かっている。よって、現在の最重要 課題は実機仕様のTOP カウンターの粒子識別性能を評価することである。そこで、2013 年6 月に SPring-8 LEPS ビームラインにて、実機仕様のTOP カウンターとして初めての照射試験を行った。 本照射試験では32 個のMCP-PMT を用いるため、それらを安定的に読み出すシステムが必要 であった。また、以前の照射試験から、読み出し回路のチャンネル間のクロストークの発生確率を 低く抑えることが重要であると分かっていた。そこで私は、CFD を用いた読み出し回路を開発し、 性能評価を行った。その結果、時間分解能は50 ps 以下を達成した。更に、クロストークの発生確 率を1 %以下にしながら、検出効率の低下を10 %以内に抑えつつ、CFD の閾値電圧とMCP-PMT の印加電圧を最適化した。 次に、光検出器の応答、石英板の光学特性を考慮したシミュレーションと照射試験のデータを比 較し、TOP カウンターの特性を評価した。その結果、MCP-PMT の量子効率や石英板表面での 反射率の光子入射角度依存性を理解することが重要であると明らかにした。その効果を確かめる ため、3 GeV/c のK 中間子と 中間子のチェレンコフ光の検出確率分布をシミュレーションで作 成し、本照射のデータと比較することで、擬似的に3 GeV/c のK の誤識別率を見積もった。その 結果、TOP カウンターに垂直に入射させる条件で、上記の効果を考慮しない場合には誤識別率は 8.0 %だったが、考慮した場合には7.4 %に改善した。本研究によって、実機仕様のTOP カウン ターを実際に動作させ、そのふるまいを解析によって理解し、粒子識別性能を初めて明らかにした。
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270. Performance evaluation of MCP-PMT for Belle II TOP counter (in Japanese) / Takuya Yonekura [BELLE2-MTHESIS-2019-015] Presented on 01 02 2015 MSc
2015
Nagoya university / Nagoya
2017 年から開始されるBelle II 実験では、B 中間子などの稀崩壊を精密に測定することで、標 準模型では説明できない新物理の探索などを行う。そのために私たちは石英輻射体と光検出器で構 成される粒子識別装置TOP(Time Of Propagation) カウンターを開発している。K/π 中間子から のチェレンコフ光の伝播時間の差O(100 ps) を約20 個の光子数で判別するため、一光子検出に対 して高い時間分解能を持つ光検出器が必要である。これまでの研究で必要な性能を持つ光検出器 MCP(Micro Channel Plate)-PMT の開発に成功し、実際の使用に向けた512 本のMCP-PMT の 量産や性能評価を行う段階となった。 世界的にみても、このような大量のMCP-PMT を実験に使用した例はない。そのため、性能評 価を量産に沿って行い、必要な性能を満たさない場合は改善する必要がある。また、実際に使用す る1.5 T 磁場中でのTOP カウンターの粒子識別性能の調整や理解のためのデータが必要である。 よって、私は1.5 T 中でMCP-PMT 全数を測定可能なシステムを構築するとともに、量子効率、 増幅率、時間分解能、収集効率の測定を行った。 量産の結果、ピーク波長での全数の平均量子効率が28.6% となり、要求である28% を満たすこと ができた。1.5 T 中では増幅率が10∼90% 減少するものの、時間分解能の悪化はないと確認した。 収集効率の減少率は5% 程度で、TOP カウンターの粒子識別性能への影響は十分小さいと確認で きた。また、1.5 T 中での各性能の印加電圧依存性の把握によって、各性能の要求を満たしつつ増 幅率の調整が可能になった。MCP-PMT の量子効率は総出力電荷量に従って低下するが、増幅率 を下げ、量子効率の低下の抑制が可能となった。本研究によって、必要な性能を持つMCP-PMT の量産を成功させ、実際の使用に向けた性能評価を完了し、TOP カウンターの性能の調整や理解 を可能にした。 バックグラウンドの理解が進み、量産品の約半数ある短寿命品の量子効率が実験中に低下すると 予想された。そのため、実験中にPMT の交換を行う可能性がある。交換後の量子効率の低下によ る複数回の交換を防ぐため、短寿命品の約9 倍以上の長寿命化を目指し、6 種の長寿命化対策を試 みた。各対策の試作品の寿命を測定し、必要な寿命を持つ対策を明らかにした。
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271. Study on PMT assembly for Belle II TOP counter mass production / Daiki Furumura [BELLE2-MTHESIS-2019-014] Presented on 01 02 2015 MSc
2015
Nagoya university / Nagoya
Belle II 実験では、B 中間子稀崩壊の精密測定により、標準模型を超えた新物理の探索を行う。我々は Belle II 検出器でK/ 識別を担うTOP カウンターを開発し、識別効率95 % 以上、誤識別率5 % 以下の 識別性能を目指している。TOP カウンターは、石英輻射体と光検出器MCP-PMT からなる新型リングイ メージ型チェレンコフ検出器であり、上記の識別性能を満たすには、発生したチェレンコフ光子の80 % 以 上がMCP-PMT に到達することが要求される。各光学素子の性能評価、石英輻射体の接着手法開発など の先行研究が進められてきた中で、MCP-PMT のアライメントと石英輻射体との光学接着を含めたPMT アセンブリ手法の確立が課題として残されていた。TOP カウンターでは、MCP-PMT の寿命の問題から 実験期間中にPMT の交換が必要になるため、PMT を着脱可能な方法で光学接着する必要がある。且つ、 接着面に気泡が入ると、全反射により到達光子数が減少するため、気泡を残さない光学接着が要求される。 試作機で行った光学グリスによる接着では、接着面の気泡が問題となり、これを解決しなければ実機量産を 開始できなかった。 そこで本研究では、シリコンゴムを使用し、PMT を石英に対して約1.5 kgf/PMT 以下の構造上安全な 力で押し付けることで光学接着することを目指した。シリコンゴムがBelle II 実験の環境下で使用可能か を調べるために、ガンマ線照射試験を行い、10 年の実験期間で予想される照射量100 Gy に対して、十分 な耐性を持つことを確かめた。このシリコンゴムに対して万能試験機による圧縮試験を行い、目標値である 約1.5 kgf/PMT 以下の力で接着面に気泡を残さずに接着するための硬度と形状を決定した。また、PMT のアライメントを保ったまま石英に押し付けるためのモジュールの製作手法も確立し、小型の模型及びほぼ 実機仕様の試作機での接着試験で、いずれも気泡を残さずに接着できることを目視で確かめた。実機一号機 の製作では、開発した手法で実際にPMT の取り付け及び取り外しが可能であることを実証した。実機で は目視による確認ができないため、CCD カメラを用いて接着面に気泡が残らないことを確認した。 本研究により、実機量産において課題であったPMT アセンブリ手法を確立した。試作機製作時に大き な問題であった気泡の問題を解決し、実機量産を可能にした。この手法の確立により、PMT に到達する光 子の割合が80 % 以上という要求を十分に満たす光学接着が可能になった。
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272. Study on the photocathode deterioration mechanism by residual gas in the MCP-PMT (in Japanese) / Genta Muroyama [BELLE2-MTHESIS-2019-013] Presented on 08 02 2018 MSc
2018
Nagoya university / Nagoya
フレーバー物理などにおいて崩壊粒子の識別は親粒子の情報を知るために重要である。粒子識別 の方法としてシンチレーション光やチェレンコフ光を用いるものがあり、その識別能力の向上に は光検出器の高い性能が必要になる。Micro-Channel-Plate (MCP)-PMT は高い時間、位置分解 能を持ち、これらの要求を満たす光検出器である。しかし、一般的なPMT に比べて光電面の量子 効率(QE) の低下が早く、寿命が短いという欠点がある。積算出力電荷に応じてQE は低下するた め、高頻度衝突実験において長期間使用する際に問題となる。 光電面のQE 低下の原因として、MCP 上に吸着した残留ガスが挙げられる。それらは増幅過程 の電子と衝突し中性ガスやイオンとなり、QE を低下させていると考えられている。我々はBelle II 実験でチェレンコフ光を利用した粒子識別装置TOP カウンターでMCP-PMT を使用するため、 長寿命化の研究を行ってきた。ガスの吸着防止にMCP にAtomic Layer Deposition (ALD) を施 すなどの対策を行いBelle II 実験の5 年間の物理ランで使用可能なMCP-PMT を開発した。量産 品の寿命の個体差が約50 % あるため、他実験への応用を踏まえると効率的な寿命対策により個体 差を抑え、かつ長寿命なMCP-PMT を生産する必要がある。そのため、私は理解が不十分なQE 低下メカニズムの解明を目指した。 私はイオンの種類、量およびそのエネルギーに着目し、これを調べた。イオンはMCP から放出 されると光電面へと衝突するまで電場によって加速する。その際のエネルギーは1 keV 程度であり PMT の印加電圧に依存するため、これを変化させることでその影響を調べることができる。イオ ンの種類と量はアフターパルスを利用し測定した。これはイオンが光電面に到達した際に放出する 二次電子による信号であり、イオンの質量に依存した時間差を伴ってやってくる。この時間差と頻 度の測定からイオンの種類と量が同定できる。私はアフターパルス測定システムを構築し、ALD 寿命対策によるイオンの種類と量の変化を調べた。またイオンのエネルギーの変化と寿命の相関を 直接調べるため、PMT の印加電圧を変化させて寿命測定を行えるように測定ベンチに改良を施し た。さらに残留ガス対策のためMCP 上にあるAl 薄膜を取り除いたPMT を作成し、Al 薄膜の有 無によるイオンの変化や寿命の変化を調べた。 アフターパルスの測定結果から、ALD 未対策品では主にH+ とHe+ が確認された。ALD 対策 品ではH+ が約50 %、He+ が約25 %に減少していたが新たにH2O+ が確認された。膜無し品 ではH+ 、He+ やH2O+ は膜有り品と同様の分布を示したが、新たにAl 膜で阻止されていた重 いイオンとみられるものが確認された。これらのイオンのうち、He+ は光学窓の石英ガラスを透 過する性質があること、H2O+ は長寿命のALD 対策品でのみ確認されることからQE 低下には ほとんど寄与していないと考えられる。寿命測定の結果、膜無しPMT の寿命は同タイプの膜有り 品に比べて短いことから、Al 膜により阻止されていた重いイオンや中性ガスが光電面のQE 低下 を引き起こしている可能性がわかった。 本研究でMCP-PMT 内部のイオンの分布を調べる測定システムを構築することができ、光電面 寿命低下に対してHe+ 、H2O+ は寄与しないことがわかった。
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273. Performance study on Belle II TOP counter (in Japanese) / Noritsugu Tsuzuki [BELLE2-MTHESIS-2019-012] Presented on 08 02 2018 MSc
2018
Nagoya university / Nagoya
Belle II 実験は2018 年に電子・陽電子衝突を開始する。同実験は2024 年までにB 中間子対を約50 億ペア生成し、稀崩壊事象の精密測定から新物理を探索する。崩壊過程を正しく再構成するには終状 態での粒子の種類を識別する必要がある。我々は新型の粒子識別装置TOP カウンターを導入し、特 に荷電K/ 中間子に対して、前身のBelle 実験よりも高い識別効率を目指す。 TOP カウンターは石英輻射体とその1 つの端面に取り付けた光検出器(PMT)、及び信号読み出し 回路から構成される。荷電粒子は石英輻射体を通過する際、チェレンコフ光を放出する。そのうち約 20 光子は石英内部を伝搬後にPMT で検出できるので、読み出し回路でその検出位置と時間を記録す る。荷電粒子の質量によって光子の検出パターンが異なることを用いて粒子識別を行う。 2016 年5 月にTOP カウンターのBelle II 検出器へのインストールが完了したので、次は期待して いる識別能力を発揮できると実証したい。具体的には、光子検出に約50 ps の時間分解能を持ち、光 子が検出面まで正しく伝搬することを確かめる。私はレーザー光試験、宇宙線試験を行い、これらを 検証した。 まずはパルスレーザーの光子で時間分解能を調べた。その結果は約100 ps と不十分であったので、 読み出し回路での信号波形をシミュレーションで再現し、原因を考察した。それにより波形解析に関 数フィットを用いれば80 ps まで改善すること、波形サンプリング時の電荷増幅率が非一様になってい たことが時間分解能を悪化させることを突き止めた。 次に、石英とPMT、及び石英同士の接着について調べた。前者は磁場試験の際にいくつか剥がれが 発見されたため、後者はインストール作業などで剥がれが起きていないと確かめるため、検証が必要 である。光子が剥がれ箇所を通過すると、約4 割が反射してしまう。レーザー光での光子検出率を磁場 試験の前後で比較した結果、512 個中24 個のPMT に接着剥がれの兆候を見た。また、チェレンコフ 光子の伝搬経路を計算することで、石英間の接着剥がれの割合を20%程の誤差で測定できる手法を開 発した。これを宇宙線データに適用した結果、有意な石英接着の剥がれは検出されなかった。よって、 少なくとも90%の光子は正常に伝搬しており、期待するTOP カウンターの識別性能のうち95%以上 は発揮できると保証した。
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274. Installation of Belle II TOP counter and study on the mechanical characteristics under the magnetic field (in Japanese) / Raita Omori [BELLE2-MTHESIS-2019-011] Presented on 08 02 2018 MSc
2018
Nagoya university / Nagoya
Belle II 実験は電子・陽電子を衝突させてB 中間子対を生成し、その終状態の精密測 定から新物理の観測・解析を行う。Belle II 実験では前身のBelle 実験の50 倍となる50 ab􀀀1 のデータを収集する。B 中間子の精密測定にはその崩壊過程に含まれるK 中間子と 中間子の識別が重要となる。我々は新型粒子識別装置TOP (Time Of Propargation) カウンターを開発・導入し、運動量3 GeV/c 以上のK= 中間子に対して95 %以上の識 別効率と、5 %以下の誤識別率を目指す。 TOP カウンターは粒子ごとのチェレンコフ光の放出角の違いによる、光子検出時間差 を利用した粒子識別装置である。その構造は、TOP カウンターの大部分を占めるチェレ ンコフ光を伝搬する石英輻射体と、その片側の端面に取り付けられる角形光検出器MCP (Micro Channel Plate) -PMT からなる。MCP-PMT は4 個を1 組のPMT モジュールと して組み上げてTOP カウンターに導入される。K= 中間子の光子検出時間差はO (100 ps) であり、光子検出時間のわずかなズレが識別効率に大きな影響を与える。TOP カウ ンターの性能は石英輻射体での光子伝搬時間と、光検出器の光子検出数によって決まる。 私はこの2 点に対して機械的側面から研究を行い、TOP カウンターに要求される性能の 実現にむけて成果を上げた。 光子伝搬時間に影響を与える機械的要因として、TOP カウンターの歪みがあげられ る。TOP カウンターが歪むと内部の石英輻射体が歪んでしまい、チェレンコフ光の伝搬 光路に変化が生じるため光子検出時間や検出するチャンネルに狂いが生じ、正確な粒子 識別ができなくなる。これを防ぐために我々はTOP カウンターの製造時からBelle II 検 出器へのインストール後まで、TOP カウンターが歪まないように細心の注意を払った。 TOP カウンターの変形を防ぐために、支持構造体をTOP カウンターに取り付け、さら にベッセル点という物体の歪みが最小になる2 点で支持しながらインストールできるよ うに、専用の治具を設計、製作した。特に私はTOP カウンターのBelle II 検出器への インストール開始から終了までの歪みの変化をストレインゲージとダイアルゲージを用 いてリアルタイムでの測定を行い、光子検出に影響を与えるような歪みがないことを確 認した。インストール後のTOP カウンターは両端でBelle II 検出器に固定されるほか、 両脇で両隣のTOP カウンターと連結され、自重での変形を防ぐ。 Belle II 検出器へのインストール後に磁場中でのTOP カウンターの動作試験を行っ たところ、TOP カウンター内部でMCP-PMT が磁場の影響を受けて回転してしまい、 光子検出が数%低下している領域があることが確認された。これを防ぐためにPMT モ ジュールの補修が予定されたが、MCP-PMT の個数や補修が可能な期間の短さから迅速 かつ確実な手段が求められた。私はダミーのMCP-PMT を用いたPMT モジュールを作 成し、MCP-PMT をPMT モジュールの中でより強固に固定する手段を模索した。それ らのPMT モジュールに対して長期に負荷をかける試験やBelle II 実験の時と同様の磁 場をかける試験を行い、MCP-PMT の磁場中での回転を防ぐ手法を確立した。 本研究により、TOP カウンターの粒子識別の識別効率を下げる機械的要因を実験開 始前に取り除くことができた。この成果はTOP カウンターが目指す識別効率を実現す ることにつながる。
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275. Alignment and timing calibration of Belle II TOP counter (in Japanese) / Satoshi Senga [BELLE2-MTHESIS-2019-010] Presented on 14 02 2019 MSc
2019
Nagoya university / Nagoya
Belle II 実験は電子・陽電子を衝突させ、B 中間子や 粒子などの崩壊を精密に測定することで、 標準理論では説明できない新物理の発見を目指している。これらの事象を精密に再構成するために は、終状態に多く含まれる=K 中間子の正確な識別が必要である。私たちは粒子識別装置として Time-Of-Propagation (TOP) カウンターを開発し、Belle II 検出器のバレル部分に全16 モジュー ルインストールした。TOP カウンターは、石英輻射体とその片側端面に設置したPMT からなる リングイメージ型チェレンコフ検出器である。荷電粒子が石英を通過するとチェレンコフ光が放出 され、PMT によって光子の検出位置・時間情報が測定される。 粒子識別は、荷電粒子の運動量と入射位置を使って予想検出位置・時間分布を計算し、粒子の 種類を仮定したときの尤度を比較することで行う。したがって、識別能力はTOP カウンターの設 置位置と時間原点に依存し、位置・時間較正が必要となる。較正目標精度は、積分ルミノシティ 50 ab􀀀1 に相当する統計量のB ! とB ! K の2 モードを使い、理想的な位置・時間のとき に対して=K の識別個数が有意に変化しない範囲とし、位置2-5 mm、角度1-3 mrad、時間10 ps 以内を目指すこととした。 TOP カウンターの位置・時間較正として、まずモジュール間の時間を合わせるために、宇宙線事 象を利用した。チェレンコフ光子の検出情報から宇宙線がモジュールに当たった時間を推定し、2 モジュール間の時間差が飛行時間と等しくなるように較正した。シミュレーションでこの手法が次 の較正に必要な精度で較正できることを確認した。実際のデータに適用したところ、最大で1.5 ns のずれを較正することに成功し、またレーザーによる結果と一致することが確認できた(図1)。 次に、e+e􀀀 ! +􀀀 事象を用い、 粒子仮定の尤度が最大になるように、位置・時間を較正す る手法を確立した。まず理想的な位置・時間の下でこの手法をシミュレーションで試験したとこ ろ、最大で位置2 mm、角度1 mrad、時間1 ps のバイアスを持っていたが、いずれも目標精度内 であることが確認できた。また、位置・時間をずらした状態でも同様の試験を行ったところ、一定 のバイアスを保ったまま正しい値を得られ、この手法が正しく動作することが確認できた。また、 本手法を実データに手法に用いることで、データ取得中に時間が変動しているという問題を新たに 明確にした(図2)。
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276. Evaluation of PID performance and mass resolution of Belle II detector for hadron spectroscopy (in Japanese) / Hikaru Hirata [BELLE2-MTHESIS-2019-009] Presented on 14 02 2019 MSc
2019
Nagoya university / Nagoya
近年、重いクォークを含むバリオンやエキゾチックハドロンの候補が数多く発見されており、 チャームバリオンにおけるダイクォーク描像の検証やエキゾチックハドロンの内部構造を理解する ことはハドロン内部のクォーク束縛に関する新たな知見となる。X(3872) はエキゾチックハドロ ンの候補の一つであり、内部構造は未解明である。私はこのX(3872) の性質を網羅し、内部構造 を複眼的に検証できるようX(3872) の崩壊幅を測定する。 X(3872) の崩壊幅は非常に小さく、Belle 実験によりその上限は1.2 MeVと決定されている。Belle II 実験は電子陽電子衝突型B ファクトリー実験であり、先行研究の約50 倍のB 中間子事象のデー タを取得予定である。したがって本実験では、先行研究で使用されていたX(3872) ! J= +􀀀 崩壊より、信号事象数は少ないものの質量分解能が良いX(3872) ! D0 D 00 崩壊を用いて感度を 向上させることができる。私は本実験環境下でX(3872) ! D0 D 00 崩壊をシミュレーションし、 X(3872) の崩壊幅の統計的な感度を見積もった。その結果、本測定は先行研究と比較して信号事 象数は半分程度であるが、質量分解能は約3 倍良いことを明らかにし、本実験で収集予定の全デー タ(50 ab 􀀀1 ) を用いれば崩壊幅の上限値を約180 keV まで向上させられる可能性があることを示 した(図1)。 ただし、本実験は立ち上げ段階であり、ハドロン分光の研究を遂行するためには、初期衝突デー タを用いて測定器の性能を理解しなければならない。したがって本研究では、崩壊幅測定に重要な 質量分解能とチャームバリオン分光に重要な陽子識別性能を実データを用いて評価した。質量分解 能の評価では、D0 中間子の荷電粒子のみで再構成できる崩壊過程を用いた。その結果、実データ での質量分解能はシミュレーションのものよりも約10%程度悪いことがわかった。また、陽子識別 性能評価では、 バリオンの再構成・選別方法と陽子識別効率・誤識別率を導出する手法をシミュ レーションを用いて開発し、それらが真の値を2%の精度で再現できることを示した。この手法 を用いて実データを解析した結果、実データとシミュレーションでは誤識別率は一致しているのに 対し、陽子識別効率の運動量依存性に違いがあることがわかった(図2)。 本研究で行なった性能評価結果を飛跡検出器や粒子識別装置の較正へと役立たせ、性能評価と較 正を繰り返すことで性能を十分に発揮させることが可能である。さらに、本研究によりこれらの性 能が十分に発揮できれば、本実験で世界初となる有意なX(3872) の崩壊幅測定といったハドロン 分光が実現可能となる。
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277. Performance tuning of photon sensor and readout electronics and evaluation of photon detection efficiency for Belle II TOP counter (in Japanese) / Rikuya Okuto [BELLE2-MTHESIS-2019-008] Presented on 14 02 2019 MSc
2019
Nagoya university / Nagoya
Belle II 実験ではe+e􀀀 衝突から生じるB 中間子対を500 億事象という世界最高統計量で収集し、その 希崩壊過程を精密に測定することで標準模型を超える新事象の探索を行う。重いB 中間子崩壊の終状態に 多く含まれる比較的軽いK/ 中間子の識別を高い効率で行う必要があるため、我々は新型粒子識別装置 Time-Of-Propagation (TOP) カウンターを導入し、識別効率95% 以上、誤識別率5% 以下での識別を目指す。 TOP カウンターは石英輻射体とその端面に取り付けた光検出器Micro-Channel-Plate (MCP) -PMT で構 成されている。石英輻射体K= が通過する際に異なる放出角で発生するチェレンコフ光子を光検出器で20 個 程度検出し、その検出時間・位置情報を用いて粒子識別を行う。この際検出光子を10% 損失すると1{2% 程 度識別効率が低下してしまうので、識別性能最大化のために光子数の十分な確保が重要となる。 光子検出システムを構成する読み出し回路とMCP-PMT の性能は個別にテストベンチで精査されてきた。 次の段階の研究として私はインストール後の性能評価と光子検出システム全体の調整を行った。さらに初衝突 運転データを用いてTOP カウンターの光子検出能力を包括的に評価した。 光子検出能力の主な要素は、読み出し回路単体の読み出し効率と、MCP-PMT の増幅率及び閾値で決まる信 号弁別効率である。まず、疑似信号を用いて読み出し効率を評価し、これが74{80% であることを示した。さ らに、この非効率は読み出し回路上の信号判定機構に起因することを指摘し、それを受けた改善によって読み 出し効率を最大100% にできることを示した。次に、1 光子レベルに減光したレーザーを用いてMCP-PMT の増幅率を調整し、信号弁別効率の目標90% 以上を全MCP-PMT で実現した(図1)。 最後に、初衝突運転データに含まれるe+e􀀀 ! +􀀀 事象でのTOP カウンターの検出光子数分布をシミュ レーションと比較し、本研究で評価した効率の影響を省いた場合に平均光子数が8{20% の範囲で一致してい ることを示した(図2)。また、 粒子の入射角度・位置などの条件に対しては期待通りに応答していることを 示した。 本研究により、光子検出の観点で衝突運転時のTOP カウンターの性能を評価し、課題を分析することがで き、目標の粒子識別性能の実現につながった。
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