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Thesis | BELLE2-MTHESIS-2021-037 |
Shota Iori
2016
Toho Univ.
Funabashi
Abstract: 現在の宇宙がなぜ物質で満ちているのか、反物質はどこへ行ったのか。この謎を解く 鍵の一つとしてCP 対称性の破れがある。Belle 実験はB 中間子の崩壊を用いることで クォークセクターのCP 対称性の破れの観測を目指した。結果、CP 対称性は確かに破れ ていることがBelle 実験によって確認された。しかしCP 対称性がどの程度破れているの か、それは標準理論から予想される範囲内なのかを議論するには測定精度が低い。また Belle 実験で観測されたイベントには標準理論の予想を外れた新物理の兆候をみせるもの もあった。そのため標準理論の検証、新物理の探究を目指しBelleII 実験がスタートする。 Belle 実験からBelleII 実験への主なアップグレード内容としては、新物理に感度を持つ 高運動量領域の測定が可能になること、ルミノシティと測定精度の向上である。それに伴 い検出器のアップグレードも行われる。A-RICH 検出器はアップグレードされる検出器の 一つで、BelleII 検出器のなかでエンドキャップ部におけるK=p 識別を担う。 K 中間子とp 中間子はどちらもハドロンであり、質量が非常に近いため識別が困難であ る。しかしK=p 識別が必要な崩壊モードは多数存在し、崩壊元のB 中間子のフレーバー を決定するフレーバータギングや、シグナルとバックグラウンドの区別など重要な役割を 担う。そのためBelle 実験・BelleII 実験の測定精度に大きく関与する。 A-RICH 検出器は荷電粒子が検出器に入射した際に発生するチェレンコフ光のリングイ メージをもとにK=p 識別を行う。チェレンコフ光を発生させるための輻射体として光透 過性があり、屈折率の調節が可能なAerogel という物質をタイル状にして敷き詰めたもの を利用する。Aerogel のタイルはアルミニウムのフレームにセットされるのだが、そのフ レームのごく僅かな壁の歪みから位置のずれなどが発生してしまう。それに加え、フレー ムの表面におけるチェレンコフ光の反射を防ぐためにブラックシートをタイルとフレーム の間に挟むことになる。その結果、Aerogel のタイル間のgap の大きさが設計値の1 mm よりも大きくなってしまう可能性がでてきた。 本研究では、gap の大きさが大きくなることによる識別性能の変化を見積もり、gap の 大きさをどの程度に抑えるべきなのかを見積もった。識別方法としてはK 中間子とp 中 間子の対数尤度の差を用い、その差が設定した閾値よりも大きい場合をp 中間子とする。 つまり設定する閾値の大きさを大きくすればK 中間子と誤識別される割合(fake rate) を 低くすることができる。しかし閾値を大きくしてしまうと本物のp 中間子を落としてし まうことになり、efficiency が下がってしまう。そのため識別性能はefficiency とfake rate を比較することで評価することができる。 また、発生したチェレンコフ光を検出するために光検出器であるHAPD を420 台使用 する。現在HAPD は浜松ホトニクスで大量生産され、それが高エネルギー加速器研究機 構に送られてきている。その送られてきたHAPD の一つ一つに対してBelleII 実験で使用 するための要求をクリアしているのかを確認するために性能試験を行っている。
Note: Presented on 17 03 2016
Note: MSc
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