Study on the photocathode deterioration mechanism by residual gas in the MCP-PMT (in Japanese)
Category: Master Thesis, Visibility: Public
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Authors | Genta Muroyama |
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Date | Jan. 1, 2018 |
Belle II Number | BELLE2-MTHESIS-2019-013 |
Abstract | フレーバー物理などにおいて崩壊粒子の識別は親粒子の情報を知るために重要である。粒子識別 の方法としてシンチレーション光やチェレンコフ光を用いるものがあり、その識別能力の向上に は光検出器の高い性能が必要になる。Micro-Channel-Plate (MCP)-PMT は高い時間、位置分解 能を持ち、これらの要求を満たす光検出器である。しかし、一般的なPMT に比べて光電面の量子 効率(QE) の低下が早く、寿命が短いという欠点がある。積算出力電荷に応じてQE は低下するた め、高頻度衝突実験において長期間使用する際に問題となる。 光電面のQE 低下の原因として、MCP 上に吸着した残留ガスが挙げられる。それらは増幅過程 の電子と衝突し中性ガスやイオンとなり、QE を低下させていると考えられている。我々はBelle II 実験でチェレンコフ光を利用した粒子識別装置TOP カウンターでMCP-PMT を使用するため、 長寿命化の研究を行ってきた。ガスの吸着防止にMCP にAtomic Layer Deposition (ALD) を施 すなどの対策を行いBelle II 実験の5 年間の物理ランで使用可能なMCP-PMT を開発した。量産 品の寿命の個体差が約50 % あるため、他実験への応用を踏まえると効率的な寿命対策により個体 差を抑え、かつ長寿命なMCP-PMT を生産する必要がある。そのため、私は理解が不十分なQE 低下メカニズムの解明を目指した。 私はイオンの種類、量およびそのエネルギーに着目し、これを調べた。イオンはMCP から放出 されると光電面へと衝突するまで電場によって加速する。その際のエネルギーは1 keV 程度であり PMT の印加電圧に依存するため、これを変化させることでその影響を調べることができる。イオ ンの種類と量はアフターパルスを利用し測定した。これはイオンが光電面に到達した際に放出する 二次電子による信号であり、イオンの質量に依存した時間差を伴ってやってくる。この時間差と頻 度の測定からイオンの種類と量が同定できる。私はアフターパルス測定システムを構築し、ALD 寿命対策によるイオンの種類と量の変化を調べた。またイオンのエネルギーの変化と寿命の相関を 直接調べるため、PMT の印加電圧を変化させて寿命測定を行えるように測定ベンチに改良を施し た。さらに残留ガス対策のためMCP 上にあるAl 薄膜を取り除いたPMT を作成し、Al 薄膜の有 無によるイオンの変化や寿命の変化を調べた。 アフターパルスの測定結果から、ALD 未対策品では主にH+ とHe+ が確認された。ALD 対策 品ではH+ が約50 %、He+ が約25 %に減少していたが新たにH2O+ が確認された。膜無し品 ではH+ 、He+ やH2O+ は膜有り品と同様の分布を示したが、新たにAl 膜で阻止されていた重 いイオンとみられるものが確認された。これらのイオンのうち、He+ は光学窓の石英ガラスを透 過する性質があること、H2O+ は長寿命のALD 対策品でのみ確認されることからQE 低下には ほとんど寄与していないと考えられる。寿命測定の結果、膜無しPMT の寿命は同タイプの膜有り 品に比べて短いことから、Al 膜により阻止されていた重いイオンや中性ガスが光電面のQE 低下 を引き起こしている可能性がわかった。 本研究でMCP-PMT 内部のイオンの分布を調べる測定システムを構築することができ、光電面 寿命低下に対してHe+ 、H2O+ は寄与しないことがわかった。 |
Conference | Nagoya |
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