Belle II実験用新型粒子識別装置Aerogel RICHの開発

Sumitted to PubDB: 2021-06-29

Category: Master Thesis, Visibility: Public

Tags: -

Authors Shuichi Iwata
Date Jan. 1, 2011
Belle II Number BELLE2-MTHESIS-2021-046
Abstract 高エネルギー加速器研究機構で行われてきたBelle 実験は,電子・陽電子非対称エネルギー衝突 型加速器KEKB によって大量のB 中間子対を生成し,その崩壊過程をBelle 測定器によって精密 に観測することにより,B 中間子系でのCP 対称性の破れの存在を証明することが主な目的であっ た。同実験は2010 年6 月をもって加速器と測定器の運転を終了し,約11 年間の実験を終えた。そ してBelle 実験の後継実験として,標準模型を超えた新しい物理の探索を最大の目的としたBelle II 実験計画が,2014 年開始を目標に進められている。 CP 対称性の破れを説明するKobayashi-Maskawa 模型の検証など,Belle 実験によって標準模 型の有効性は確かめられたが,ヒッグス粒子が未発見であることや階層性の問題,実験で決めなけ ればならないパラメータが非常に多いなど,幾つかの問題を抱えている。これに答えるには,標 準模型の枠組みだけでは難しく,超対称性理論や余剰次元など多くの模型が提唱されているが,ど れも仮説の域を超えないのが現状である。 Belle II 実験は,これらの模型に対し実験的制限を与えることにより,新しい物理を見つけ出す ヒントを得ようとしている。新しい物理の効果は,B 中間子系のような低エネルギーでの実験で は標準模型からの“ ずれ”として観測される。したがって新しい物理を明確に観測するには,標準 模型によって十分理解できる物理過程をより精密に観測することや,非常に稀にしか起こらない ような事象の観測が求められることになる。Belle 実験よりさらに精密な測定かつ十分な統計量が 得られるように,KEKB 加速器/Belle 測定器をSuper KEKB 加速器/Belle II 測定器へとアッフ グレードする計画が進められており,より高精度の測定器の開発が行われている。 Belle II 測定器はBelle 測定器と同様に,目的,用途別にいくつかの副検出器からなる複合体であ る。この中で生成荷電粒子(主にπ 中間子とK 中間子) の識別を行う重要な副検出器として,我々 のグループではAerogel Ring Imaging Cherenkov 検出器(A-RICH) の開発を進めている。Belle 測定器において同様の役割を担っていたAerogel Cherenkov Counter は,Endcap 部と呼ばれる 領域での識別可能運動量を,空間的制約のため2 GeV/c までに限定していた。Belle II 実験では Endcap 部でも稀崩壊の観測を可能とするため,これまで識別出来ていなかった高運動量領域でも 識別可能な新型粒子識別装置として,A-RICH を開発することとなった。 A-RICH の目標性能は,4 GeV/c までの運動量領域で4σ 以上のK/π 分離能力を達成すること である。A-RICH の主要構成要素としては,半導体光測定器Hybrid Avalanche Photo-Detector (HAPD),輻射体としてのシリカエアロゲル,そしてHAPD 専用読み出し電子回路システムがあ る。読み出し電子回路システムはアナログ信号処理用としてASIC,デジタル信号処理用として FPGA の2 種類のIC によって構成されている。本研究において,この読み出しシステムが最終版 として十分な性能をほぼ達成できていることが検証された。
Conference Hachioji

Files