Home > Books, Theses & Reports > Theses > Belle II 実験用 粒子識別装置 Aerogel RICH における Cherenkov 放射角分布のバックグラウンド解析 |
Thesis | BELLE2-MTHESIS-2021-062 |
Ryosuke Kataura ; Yosuke Yusa
2016
Niigata University
Niigata
Abstract: 1999 年から 2010 年の間に茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構 (KEK) で行われてい た Belle 実験は電子・陽電子非対称エネルギー衝突型加速器実験である。本実験は KEKB 加速器 を用いて大量の B 中間子を生成し、その崩壊過程を Belle 検出器によって観測することで標準理 論の精密測定を行った。この測定により、小林・益川模型の証明に成功し、 また新たなハドロン 共鳴状態の発見など数々の成果を上げられた。一方で、未新物理の寄与を示す標準理論からのず れは有意な信号で観測されておらず、さらなる検証のためにはデータ統計量を増やす必要がある。 そこで KEKB 加速器を SuperKEKB 加速器、Belle 検出器を Belle II 検出器へアップグレード し、標準理論を超える新物理の探索を行う Belle II 実験が、2018 年 開始に向け準備が進められて いる。 Belle II 検出器は複数の副検出器から構成されており、そのうち荷電粒子の識別を行うものとし て我々は Aerogel RICH (ARICH) の開発を行っている。Belle 検出器で同様の役割を担っていた Aerogel Cherenkov Counter は空間的制約のため 2.0 GeV/c までの低運動量領域しか識別が行え なかった。検出器を高度化するにあたり、これまで識別できていなかった高運動量領域でも粒子 識別可能な検出器として ARICH を開発するに至った。 ARICH は荷電粒子が輻射体を通過することで放射される Cherenkov 光を光検出器によりリン グイメージとして観測し、ドリフトチェンバー等の他の検出器から得られる飛跡情報を併せて、粒 子質量に相関のある Cherenkov 放射角を算出し粒子識別を行う。ARICH の主な構成要素として、 輻射体であるシリカエアロゲル、半導体光検出器 Hybrid Avalanche Photo-Detector (HAPD)、 HAPD 専用読み出しシステムがある。HAPD は 5mm 程度の位置分解能をもち、1 光子検出が可能 である特徴をもつ。これらを用いて ARICH では主に荷電 K/π 中間子の識別を行い、0.5 GeV/c から 4.0 GeV/c の運動量領域に対して有意度 4σ 以上の識別精度を目標としている。 ARICH に使用する各構成要素はほぼ開発が終了しており、2013 年 5 月にドイツにある DESY 研究所のテストビームライン T24 にてプロトタイプ ARICH を用いた電子ビーム照射試験による 性能評価のためのビームテストを実施した。このセットアップに対して 5 GeV/c の電子ビームを 照射し、再構成により得られた Cherenkov 放射角分布から粒子識別能力を算出すると、目標であ る有意度 4σ 以上の識別能力があることを確認した。 一方でビームテストにより得られた Cherenkov 放射角分布にはバックグラウンド事象が含まれ ていた。バックグラウンド事象の一部は先行研究により調査されており発生原因も予測されてい るが、その分布について正確な理解はされていない。バックグラウンドの正確な理解は識別能力 向上に繋がると期待されるため、本研究では 2013 年に行われたビーム照射試験を Monte Carlo シミュレーションで再現し、測定データと比較することで Cherenkov 放射角のバックグラウンド 事象の検証を行った。 本論文では Cherenkov 放射角分布におけるバックグラウンド事象の検証結果と、特定された バックグラウンド事象について粒子識別尤度計算に用いる確率密度関数を報告する。
Note: Presented on 09 02 2016
Note: MSc
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