Thesis BELLE2-MTHESIS-2021-056

RICH検出器開発に向けた、HPDの性能試験と読出し回路の開発

Takayuki Seki

2004
Tokyo Metropolitan University Hachioji

Abstract: 今日、高エネルギー物理学では、標準理論のより詳細な検証、標準理論を越える物理 事象の観測を目標に、非加速器実験も含め数多くの実験が行われている。その中で、小 林・益川モデルの検証、CP 非対称の起源の探索を目標に1998 年に開始されたBelle 実験 は、現在まで様々な成果を上げ、標準理論をも越えるやも知れない事象の観測をするま でに至っている。Belle 実験は、電子・陽電子衝突型加速器KEKB を用いB 中間子・反 B 中間子対を大量に生成し、それらの崩壊事象を詳細に観測する事からCP 非対称性に 関する新しい結果を生み出している。これもひとえに世界最高クラスのルミノシティー L = 1034[cm¡2s¡1] を誇る加速器KEKB と、高精度なBelle 検出器を構成する検出器群が 実現できたからこそである。現在もなお、Belle 実験は更なる新しい事象の検出を目標に 稼動し続けており、2006 年まで続けられた後の計画として、加速器、検出器ともにアッ プグレードを行うことで、B 中間子を用いた加速器実験における更なる探求を目指した、 Super-KEKB という計画が立ち上がりつつある。Super-KEKB では、Belle 実験よりもハ イ・ルミノシティーな加速器、高精度な検出器をもって、”稀”な事象を余すことなく検 出することを目標としている。 現在、Belle 検出器にはK 中間子と¼ 中間子の識別用検出器として、閾値型エアロゲ ル・チェレンコフ・カウンター(以下、ACC) が導入されている。K=¼ 識別は”CP 対象性 の破れ”を測定するために、重要な要素となっている。閾値型であるためACC では、あ る運動量範囲において¼§ 中間子が輻射体中を通過した時のみチェレンコフ光が放射され ることで信号として検出され、同一運動量のK§ 中間子に対しててはチェレンコフ光が 放射されず信号が検出されない、ということからK=¼ 識別を行ってきた。現在は、信号 の大きさからチェレンコフ光の光量を見積もり、そこから”K 中間子らしさ”、”¼ 中間子 らしさ”という変数を求めることで、閾値型としてのACC よりも高効率なK=¼ 識別を実 現している。しかし、現状において、他の粒子とK 若しくは¼ 中間子との識別は全デー タ量の約90[%]、更にK=¼ 中間子間の識別は全データ量の約80[%] しか行えていない。そ して、K 若しくは¼ 中間子のどちらかであるK¼ の混合割合は約10[%] となる。 一般的に”稀”な事象を観測しようとする素粒子実験において、統計量を稼ぐためにも、 新たな事象の観測においても上記のようなデータの損失は可能な限り減らす必要がある。 そこで我々は、更なる粒子識別能力の向上を目指し現ACC に代わる新たな粒子識別検出 器として、TOP counter とRICH counter の研究・開発をSuper-KEKB 計画に向け行っ ている。その様な流れの中、私はそのRICH counter に関する研究・開発に携わってきた。 RICH counter とは、荷電粒子が薄い輻射体を通過した際、円錐状に放射されるチェレ ンコフ光の断面をリング・イメージとして捕らえることで、チェレンコフ光の放射角を測 定し、荷電粒子の速度を測定する、という検出器である。他の検出器より運動量を測定す ることで、質量を割り出すことができ荷電粒子を特定することが可能となる。リング・イ メージを捕らえる為に、RICH counter では位置分解能を有する光検出器が必要となる。 また、Belle 実験では、光検出器は磁場中で動作する必要があり、また、設置空間も狭く限 られている。そのため、RICH counter には”Proximity Forcusing RICH counter”を、光検 出器としてマルチ・チャンネルHybrid Photo Detector(HPD) 若しくはHybrid Avalanche Photo Detector(HAPD) を使用します。信号読み出しの為の回路としては、検出器にマウ ントされる読出し電子回路の増幅器として、一般的なJ-FET を用いた増幅器ではなく、 CMOS-FET を用いた集積回路によりRICH counter を実現しようと試みている。 そこで私は、RICH counter の研究・開発において、新しく開発した高性能の光検出器 HPD とHAPD の性能評価と、集積回路の設計・開発を行ってきた。HPD とHAPD の 評価においては、RICH counter に使用される予定の物は、144[channel] のHPD 若しく はHAPD だが、その前段階の試作品として開発された、Single channel HPD と、3 £ 3 channel HAPD の評価を行った。Single channel HPD に関しては、特に検出器としての 基本特性を調べ、3£ 3 channel HAPD に関しては、位置分解能を持つ光検出器としての 特性を調べた。また、光検出器の評価とは別に、読出し回路用の集積回路の設計を並行 して行い、第一作目の集積回路が、昨年4 月頃完成したので、回路の動作確認を行った。 これらの結果についてまとめ、また最終結論として、現状で実現できるであろうRICH counter 像について報告する。

Note: Presented on 09 01 2004
Note: MSc

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 Record created 2021-06-29, last modified 2021-06-29


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