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Thesis | BELLE2-MTHESIS-2021-050 |
Yasuo Ueki
2009
Tokyo Metropolitan University
Hachioji
Abstract: 今日、高エネルギー物理学では素粒子物理学の標準理論(以降では標準理論と呼ぶ)の検 証、標準理論を越える物理事象の観測を目標に様々な実験が行われている。その中でB 中 間子系でのCP 非保存現象を研究するBelle 実験が1999 年より開始された。Belle 実験で は、非対称エネルギー電子・陽電子衝突型加速器(KEKB) を用いて、B 中間子・反B 中間 子対を大量に生成し、それらの崩壊事象を詳細に観測することによりCP 非対称性に関す る新しい結果を得ている。 Belle 実験では希崩壊事象の検出や崩壊前のB 中間子のフレーバー同定のために、K 中間子とπ中間子の粒子識別が欠かせない。現在Belle 検出器ではK/π中間子の識別を CDC(中央飛跡検出器)、TOF(飛行時間測定器)、ACC(シリカエアロジェル・チェレ ンコフ・カウンター)で行っている。このうちACC では高運動量領域におけるK/π中間 子識別を、それら粒子が輻射体であるエアロゲル通過した際に放射するチェレンコフ光の 発生の有無により実現している。しかし現在のBelle 検出器のendcap 部においては、そ の空間的制約からACC とTOF を同時に搭載することが困難であるため、ACC のみを搭 載している。そのためendcap 部においては高運動量領域でのK/π中間子識別が行えて いない。しかしデータの蓄積により新事象を含む希崩壊現象を検出するには、統計量を稼 ぐことが必要であり、そのためにはさらなるendcap 部での粒子識別能力の向上が求めら れる。そこでendcap 部での粒子識別能力向上に向けて、現在ACC のアップグレードと してA-RICH 検出器(Aerogel-Ring Imaging CHerenkov Counter)の開発、導入を進 めている。 A-RICH 検出器は荷電粒子が輻射体であるエアロゲルを通過した際に円錐状に放射さ れるチェレンコフ光を光検出器によって捉え、チェレンコフ光の放出角を再構成しその荷 電粒子の速度を測定し、その速度と他の検出器から得られた運動量の情報から質量を割り 出し粒子識別を行う。このA-RICH 検出器の構成要素である光検出器に要求されるのは、 「十分な有効面積」「高い検出効率」「位置分解能」「1.5T の磁場中での動作」という条件で ある。我々はこれらの要求を満たす光検出器として(株)浜松ホトニクスと共同で新型マ ルチアノード型光検出器であるHAPD(Hybrid Avalanche Photo Diode)を研究・開 発している。現在試作されているHAPD は144ch の読み出しをもつものである。 Belle 検出器に設置されるA-RICH 検出器全体では144ch のHAPD を約600 台用い る予定であり、このときの信号読み出しは10 万チャンネル以上となる。そこで膨大な量 になる配線を抑え、多チャンネルに対応し、低ノイズで高利得な読み出しのできるシステ ムが必要となってくる。そのため我々はHAPD 信号処理用の集積回路(ASIC)を開発し ている。 本論文ではA-RICH 検出器の研究・開発において、読み出し電子回路として開発された ASIC「S シリーズ」の改良版であるSA01 についての試作経緯と性能評価、また2008 年 にKEK 内のFuji test beamline の電子ビームを用いて行われた、プロトタイプA-RICH 検出器のbeamtest の概要とその結果、今後の課題を報告する。
Note: Presented on 31 03 2009
Note: MSc
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