Home > Books, Theses & Reports > Theses > Aerogel-RICH 検出器に向けたマルチアノード型光検出器:HAPD の開発 (Development of multi-anode photon detector for Aerogel-RICH Counter) |
Thesis | BELLE2-MTHESIS-2021-049 |
Yuichi Miyazawa
2008
Tokyo Univ. of Science
Noda
Abstract: 今日、高エネルギー物理学では標準理論のより詳細な検証、標準理論を超える物理事象 の観測を目標に、数多くの実験が行われている。その中で、小林・益川モデルの検証、CP 非対称の起源の探索を目標に1998 年にBelle 実験が開始された。Belle 実験は、電子・陽 電子衝突型加速器(KEKB) を用いて、B 中間子・反B 中間子対を大量に生成し、それらの 崩壊事象を詳細に観測することからCP 非対称性に関する新しい結果を生み出している。 現在、Belle 検出器ではK/π 中間子の識別をCDC , TOF , ACC で行っている。K/π 中 間子識別は“CP 対称性の破れ”を測定するために重要な要素となっている。このうち ACC では、ある運動量範囲においてπ 中間子が輻射体中を通過した時のみチェレンコフ 光が放射され信号として読み出され、同一運動量のK 中間子に対してはチェレンコフ光 が放射されないため信号が検出されないという検出原理により、barrel 部においては高運 動量領域のK/π 識別を主体的に行ってきた。しかし、現在のBelle 検出器のendcap 部に おいては、空間的制約からTOF とACC を同時に搭載することが困難であるため、ACC のみを搭載している。そのため、barrel 部においてTOF が主体的に行っている比較的低 運動量の粒子識別であるB 中間子のフレーバータギングを、endcap 部では単一屈折率を 持つエアロジェルを用いたACC により行っている。そのため、endcap 部では高運動量を 持つK/π 中間子に対して識別が行えていないのが現状である。一般的に、“稀”な事象を 観測しようとする素粒子実験において、統計量を稼ぐためにも、新たな事象の観測におい ても上で述べたような識別不可能な粒子があることは非常に問題となってくる。そこで、 endcap 部での粒子識別能力向上に向けて、現在ACC のアップグレードとしてA-RICH 検出器(Aerogel-Ring Imaging Cherenkov Counter) を導入することを計画している。 A-RICH 検出器は荷電粒子が輻射体であるエアロゲルを通過する際に円錐状に放射され るチェレンコフ光を位置分解能を持つ光検出器によって捉え、検出器上の位置情報から チェレンコフ光の放出角を再構成することで粒子識別を行うものである。光検出器に要求 されるのは「十分な有効面積」「高い検出効率」「位置分解能」、そしてBelle 検出器内に 設置するため「1.5T の磁場中で動作可能」という条件である。これらを満たすことは現 在市販されている光検出器では難しいため、我々はこれらの要求を満たす新型光検出器 として、(株)浜松ホトニクスと共同でHAPD(Hybrid Avalanche Photo Diode)と呼ばれ る新型マルチアノード型光検出器を研究・開発している。現在試作されているHAPD は 144ch の読み出しを持つものである。 また、Belle 検出器に設置されるA-RICH 検出器全体では144ch のHAPD を約600 台 用いる予定である。このとき信号の読み出しは約10 万チャンネルとなる。そこで、これ らの膨大な信号を処理するシステムが必要となってくるため、我々はHAPD 信号処理用 の集積回路(ASIC) も開発している。 本論文では、2007 年に製作され、初めて安定して動作している2 つの144ch HAPD に ついてAPD のふるまい、1 光電子応答性等の性能評価を行った。これによりAPD chip の 個体差がほとんどなく安定して動作しており、どちらのサンプルにおいても1 光電子信号 が観測可能であることが確認された。また、2006 年冬に製作されたASIC の最新version であるASIC-S04 の性能評価を行い、基本的な信号処理と、以前のversion であるS03 で見られた問題点が改善されていることが確認された。さらに、A-RICH 検出器に向け て、これらを組み合わせて読み出し系全体としての動作試験を行い、初めてASIC により HAPD による1 光電子信号が観測された結果等も報告する。
Note: Presented on 21 02 2008
Note: MSc
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