Thesis BELLE2-MTHESIS-2021-048

Belle II実験の為のAerogel RICH検出器用読み出し電子回路の開発

Eiryo Kuroda

2010
Tokyo Metropolitan University Hachioji

Abstract: Belle 実験はB 中間子におけるCP 対称性の破れを観測し、小林・益川理論の検 証を行なう事を目的として1999 年より開始された実験である。Belle 実験では、電 子・陽電子衝突型加速器KEKBを用いてB中間子・反B中間子対を大量に生成し、 それらの崩壊事象をBelle 測定器によって詳細に観測する事でCP 対称性の破れの 検証や新しい共鳴状態の発見等、数々の成果を挙げてきた。これらの結果には標 準モデルを超えた新しい物理を示唆する結果も含まれているが、新しい物理の証 拠と言える程の精度での結果には至っていない。この新しい物理を示唆する結果 の更なる検証、新しい物理を含む崩壊事象を観測する為にBelle 実験の後継実験と してBelle II 実験が計画されている。Belle II 実験ではBelle 実験よりも更に高い ルミノシティの加速器SuperKEKB と更に高精度なBelle II 測定器を用いて新しい 物理を含む稀少な事象を余す事なく検出する事を目標としており、そのために検 出器・加速器のアップグレードが進行している。 Belle 実験、Belle II 実験では稀崩壊事象の検出や崩壊前のB 中間子のフレー バーの同定の為に、K 中間子とπ中間子の粒子識別が欠かせない。Belle 実験では K/π粒子識別をCDC(Central Drift Chamber)、TOF(Time-Of-Flight Counter)、 ACC(Aerogel Cherenkov Counter) で行なっている。この内、ACC は高運動量領 域でのK/π粒子識別を担っているが、Belle 測定器のendcap 部においては、空間 的制約により低運動量領域でのK/π粒子識別を担っているTOF の搭載が困難で あった為、ACC のみで比較的低い運動量領域でのK/π粒子識別を行なっている。 しかし、Belle II 実験で新事象を含む稀崩壊事象を検出する為には、統計量を稼ぐ 必要があり、endcap 部でも高運動量領域のK/π粒子識別を行なう事が求められ る。そこで、endcap 部での粒子識別能力向上に向けて、新たなK/π粒子識別検出 器としてAerogel RICH(Ring Imaging Cherenkov Counter) 検出器の導入を計画し ており、開発を進めている。 Aerogel RICH 検出器は、荷電粒子が輻射体であるaerogel を通過する際に発生 するチェレンコフ光を光検出器でリング状に検出し、チェレンコフ光の放射角を 再構成し荷電粒子の速度を導出する。この速度情報と他の検出器で得られる運動 量情報からK/π粒子識別を行なう。このため、Aerogel RICH 検出器に用いられ る光検出器は1 光子程度であるチェレンコフ光を検出可能で、十分な位置分解能・ 有効面積を持っている事が求められる。我々はこれらの要求を満たす光検出器と して144 チャンネルのHAPD(Hybrid Avalanche Photo Detector) を(株) 浜松ホト ニクスと共同で開発している。 HAPD は一般的な光電子増倍管と比較すると増幅率が低く、読み出しには高利 得・低雑音の増幅器が必要となる。また、Belle II 測定器にインストールする際に は約500 台のHAPD を使用する為、計7 万チャンネルに及ぶ信号を同時に読み出 す事が可能な読み出し電子回路が必要である。そのため、144 チャンネルHAPD の信号読み出し電子回路をASIC(Application Specific Integrated Circuit) として 開発している。また、柔軟な読み出しを可能にし、Belle II のデータ収集システ ムの対応できるようにする為に、ASIC からのデジタル信号の処理をFPGA(Field Programmable Gate Array) で行なう事を計画している。 本論文では、Aerogel RICH 検出器の読み出し回路として開発されたASIC の 「SA-series」のSA01 とFPGA を用いた読み出しシステムの動作検証とチャンネル 数を増やした新ASIC のSA02 の性能評価について記述する。また、Aerogel RICH 検出器の性能評価として2009 年11 月に行なったプロトタイプAerogel RICH 検出 器のビーム照射実験の結果についても述べる。 ii

Note: Presented on 31 03 2010
Note: MSc

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 Record created 2021-06-29, last modified 2021-06-29


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