Thesis BELLE2-MTHESIS-2021-035

Belle II 実験用粒子識別装置Aerogel RICH におけるCherenkov 放射角分布のバックグラウンド解析

Ryusuke Kataura

2016
Niigata University Niigata

Abstract: 1999 年から2010 年の間に茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK) で行われてい たBelle 実験は電子・陽電子非対称エネルギー衝突型加速器実験である。本実験はKEKB 加速器 を用いて大量のB 中間子を生成し、その崩壊過程をBelle 検出器によって観測することで標準理 論の精密測定を行った。この測定により、小林・益川模型の証明に成功し、また新たなハドロン 共鳴状態の発見など数々の成果を上げられた。一方で、未新物理の寄与を示す標準理論からのず れは有意な信号で観測されておらず、さらなる検証のためにはデータ統計量を増やす必要がある。 そこでKEKB 加速器をSuperKEKB 加速器、Belle 検出器をBelle II 検出器へアップグレード し、標準理論を超える新物理の探索を行うBelle II 実験が、2018 年開始に向け準備が進められて いる。 Belle II 検出器は複数の副検出器から構成されており、そのうち荷電粒子の識別を行うものとし て我々はAerogel RICH (ARICH) の開発を行っている。Belle 検出器で同様の役割を担っていた Aerogel Cherenkov Counter は空間的制約のため2.0 GeV/c までの低運動量領域しか識別が行え なかった。検出器を高度化するにあたり、これまで識別できていなかった高運動量領域でも粒子 識別可能な検出器としてARICH を開発するに至った。 ARICH は荷電粒子が輻射体を通過することで放射されるCherenkov 光を光検出器によりリン グイメージとして観測し、ドリフトチェンバー等の他の検出器から得られる飛跡情報を併せて、粒 子質量に相関のあるCherenkov 放射角を算出し粒子識別を行う。ARICH の主な構成要素として、 輻射体であるシリカエアロゲル、半導体光検出器Hybrid Avalanche Photo-Detector (HAPD)、 HAPD 専用読み出しシステムがある。HAPD は5mm程度の位置分解能をもち、1 光子検出が可能 である特徴をもつ。これらを用いてARICH では主に荷電K= 中間子の識別を行い、0:5 GeV/c から4.0 GeV/c の運動量領域に対して有意度4 以上の識別精度を目標としている。 ARICH に使用する各構成要素はほぼ開発が終了しており、2013 年5 月にドイツにあるDESY 研究所のテストビームラインT24 にてプロトタイプARICH を用いた電子ビーム照射試験による 性能評価のためのビームテストを実施した。このセットアップに対して5 GeV/c の電子ビームを 照射し、再構成により得られたCherenkov 放射角分布から粒子識別能力を算出すると、目標であ る有意度4 以上の識別能力があることを確認した。 一方でビームテストにより得られたCherenkov 放射角分布にはバックグラウンド事象が含まれ ていた。バックグラウンド事象の一部は先行研究により調査されており発生原因も予測されてい るが、その分布について正確な理解はされていない。バックグラウンドの正確な理解は識別能力 向上に繋がると期待されるため、本研究では2013 年に行われたビーム照射試験をMonte Carlo シミュレーションで再現し、測定データと比較することでCherenkov 放射角のバックグラウンド 事象の検証を行った。 本論文ではCherenkov 放射角分布におけるバックグラウンド事象の検証結果と、特定された バックグラウンド事象について粒子識別尤度計算に用いる確率密度関数を報告する。

Note: Presented on 30 03 2016
Note: MSc

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 Record created 2021-06-29, last modified 2021-06-29


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