Home > Books, Theses & Reports > Theses > Belle II 実験ARICH 検出器の光反射ミラー部における粒子識別性能の評価 |
Thesis | BELLE2-MTHESIS-2021-030 |
Shiori Kakimoto ; Hidekazu Kakuno
2019
Tokyo Metropolitan University
Hachioji
Abstract: 茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構ではBelle II 実験が今年4 月から行われている。Belle II 実験はSuperKEKB 加速器を用いて電子・陽電子を加速し衝突させ、大量のB 中間子を生成するルミノシティーフロンティア実験である。B 中間子の崩壊過程を精密に測定することにより標準模型からのズレを観測し、新物理の探索を目的としている。前身のBelle 実験ではB 中間子の稀崩壊を測定するにはデータ量が不足していたので、本実験ではルミノシティを約50 倍に増やし統計量・精度を向上させる。Belle II 検出器は各役割に応じた複数の検出器からなる複合型測定器であり、その中でもEndcap 部にあるARICH(Ring Imaging CHerenkov) 検出器は荷電K/π中間子の識別の役割を担う。ARICH 検出器は輻射体であるシリカエアロゲルと光検出器HAPD(Hybrid Avalanche Photo detector)の2 層構造になっている。荷電粒子が輻射体を通過する際に円錐状に発生するチェレンコフ光を光検出器HAPD で2 次元リングイメージとして検出し、そのリングイメージを再構成することにより粒子識別を行う。ARICH 検出器では、ARICH 検出器の外周を覆うようにミラー(ガラス素材の反射板)が取り付けられている。トラックがARICH 検出器の外側の端に入射した際、円錐状に放出されたチェレンコフ光の一部がARICH 検出器の外側に抜けてしまうためにリングイメージ全体をとらえることができなくなってしまう。そこでミラーを設置することによりARICH の端にきた光子を反射させ、リングイメージの全体をつかむことができる。本研究ではミラーがある場合とない場合を比較してどの程度識別効率に差がでるのかを検証し、さらにミラー設置精度(R 方向に5mm 移動させた場合)についての識別効率の関係についても確認した。ミラーが正しい位置にある場合と比べK 中間子の識別効率はどちらとも誤差の範囲内だったが、π中間子の識別効率についてミラーがない場合は約6 %、設置精度が悪い場合は約4 %ほど低下した。そのためミラーはARICH検出器に必要であり、またミラー位置のずれの測定と補正を行う必要があることがわかった。さらに本研究ではミラーが本来の位置からずれた際にチェレンコフ角分布にどのような変化があるのかシミュレーションを行うことにより確認した。シミュレーションの結果をもとに4 月から7 月に行われた試運転(phase2)でのデータを解析した結果、ミラーの位置が本来の位置からずれていることがわかった。さらにその位置のずれを考慮してリングイメージを再構成したところ、光速c と荷電粒子の速度v の比(c/v) として計算したチェレンコフ角ピークが0.998 から0.999 となり予想値の1に近づき、さらにチェレンコフ角ピークの角度分解能についても4 %減少し改善された。
Note: Presented on 10 01 2019
Note: MSc
The record appears in these collections:
Books, Theses & Reports > Theses > Masters Theses