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Thesis | BELLE2-MTHESIS-2021-012 |
Ryogo Okubo
2021
Nagoya university
Nagoya
Abstract: 高時間分解能光検出器は素粒子実験の新たな検出器技術の実現に重要な役割を果たす。例えば、光検出器最高の= 30 psの時間分解能を持つMicro-Channel-Plate PMT(MCP-PMT)は、BelleII実験で粒子識別を行う新型チェレンコフ検出器Time-Of-Propagation Counterなどで活用される。しかし、MCP-PMTには量子効率が積算出力電荷に依存して低下する問題がある。これを解決することで現行実験より高いバックグラウンド環境でもMCP-PMTを活用できるようになると期待される。また、MCP-PMTが高価であることも課題である。Gaseous Photomultiplier(GasPM)は、単純な構造で製造コストを抑えながら高時間分解能を達成することを目指して発明された新型光検出器である。GasPMは現在開発初期段階だが、将来的には大面積かつ高時間分解能の光子検出など、コスト面でMCP-PMTを使用できない用途での活用を拡大すると期待される。そこで、本研究では、MCP-PMTの光電面寿命の改善と新型光検出器GasPMの開発を並行して行う。MCP-PMTの光電面寿命は、MCP表面へ原子層堆積(ALD)を施してMCP表面に残留するガスの影響を抑制することで改善可能である。しかし、先行研究によるとMCP-PMTの一部の製造バッチで10 C=cm2以下の短い寿命を示し、その原因としてALD膜が薄かったことが疑われた。そこで、ALD膜を厚くしたMCP-PMTの寿命評価を行った結果、寿命は図1のように平均10 C=cm2以上に改善されることを示した。さらにALD膜を厚くすることで寿命改善が期待されるが、厚いALD膜は増幅率飽和特性が変わる可能性があるため、LED光による高バックグラウンド下での増幅率を実際に評価し、増幅率飽和は実用上問題ないことを示した。並行して、GasPM実用化に必要な高時間分解能の実証、実用的光電面開発、収集効率評価などの開発項目の内、本研究では高時間分解能の実証を目的に初の試作機を用いた時間分解能評価を行った。その結果、ストリーマ放電の影響によって増倍率が高い領域で時間分解能が低下するが、増幅率の低い領域で図2のように≃46:1 ps(レーザーのパルス幅≃17ps、読み出し回路の時間分解能≃35 psを含む)の高い時間分解能を持つことを示した。このことで、評価方法の改善や今後の開発によって、GasPMがMCP-PMTに匹敵する高い時間分解能を持つ可能性を示した。本研究によりALD膜厚を厚くすることによるMCP-PMTの光電面寿命改善の可能性を示した。また、高時間分解能光検出器の低コスト化を実現する新型光検出器GasPMの実用化の第一段階として、高時間分解能が実現可能であることを示した。
Note: Presented on 15 02 2021
Note: MSc
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