Belle II実験Phase IIランにおけるARICH検出器のアライメントおよびB -> Kpi崩壊の探索

Sumitted to PubDB: 2021-06-28

Category: Master Thesis, Visibility: Public

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Authors Hidekazu Kakuno, Sachi Tamechika
Date Jan. 1, 2019
Belle II Number BELLE2-MTHESIS-2021-031
Abstract Belle II 実験は、茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構(KEK) で稼働し始めた SuperKEKB 加速器を用いて7GeV に加速した電子と4GeV に加速した陽電子の衝突によりB 中間 子対を大量に生成し、崩壊過程をBelle II 検出器を用いて詳細に調べるルミノシティフロンティア実 験である。B 中間子の崩壊過程に含まれるごく稀な事象を精密に調べることで、標準模型を超える新 しい物理を探索することを目的としている。 先行研究であるBelle 実験ではB 中間子と反B 中間子のCP 対称性の破れを発見し、2008 年の 小林・益川両氏のノーベル物理学賞受賞に貢献した。2010 年6 月にSuperKEKB 加速器への加速器 のアップグレードとBelle II 実験に向けた測定器の研究開発が始まった。SuperKEKB 加速器は衝突 点におけるビームサイズを1 20 に絞り込み、蓄積ビーム電流を2 倍に高めることでビーム衝突性能を KEKB 加速器の40 倍に増やすことを目指す。加速器の改造にともない、測定器もより高いビーム強 度に対応するため一新した。Belle 実験で蓄積されたデータの50 倍のデータを収集・解析することに より、B 中間子やタウレプトンなどの標準模型では説明できない極めて稀な崩壊事象や対称性の破れ を実験的証拠として積み上げ、宇宙初期の極めて高いエネルギーで成り立つ新しい物理法則を探索す る。2018 年4 月から7 月までにBelle II 実験ではコミッショニングの第二段階(Phase II) として初 のビーム衝突によるデータ収集を行った。 Belle II 検出器は複数の検出器から構成される。そのうちの一つであるAerogel Ring Imaging CHerenkov 検出器(ARICH) は、荷電K 中間子と荷電 中間子の粒子識別を担う。ARICH はシリ カエアロゲル輻射体と光検出器Hybrid Avalanche Photo-Detector (HAPD) からなり、荷電粒子がシ リカエアロゲルを通過する際に放射するチェレンコフ光をリングイメージとしてHAPD で観測する。 このチェレンコフ光のリングイメージの半径の違いから粒子質量を求めることで、粒子識別を行う。 ARICH 検出器が期待通りの粒子識別性能を発揮するためにアライメントを行う必要がある。本 研究では、ARICH 検出器の設置位置のずれを測定および補正するため、モンテカルロシミュレーショ ンにおいて飛跡検出器に対するARICH 検出器のずれを模擬し、アライメント手法を開発した。また 実際の衝突のデータを用いて本研究で開発した手法によりARICH 検出器のアライメントを行った。 その結果、約1mm の並進および約0.1 °の回転があることを特定した。さらにアライメントを行うこ とでチェレンコフ角分布の幅が約7% 向上した。これはK= 分離能力の約7% の向上に対応する。 Belle II 実験の物理モードの一つであるB ! K はクォークレベルではb ! s 過程で表され る。この崩壊過程はフレーバーを変える中性カレント過程であり、ループを介してのみ発生する。こ のようなループを介した崩壊過程においては、質量の大きな仮想粒子の寄与が大きく新物理に敏感で ある。 本研究では、Belle II 実験におけるB ! K 事象の再発見を目指して、B+ ! K+ ! K+0 、 B0 ! K0 ! K+􀀀 、B+ ! K+ ! Ks+ の3 つの崩壊モードの解析を行った。モンテカルロ シミュレーションを用いて事象選択条件の最適化、及び事象数の見積もりを行った。その事象選択条件 を用いて、Belle II 実験の初のビーム衝突データの解析を行った。その結果、B0 ! K0 ! K+􀀀 で4 つの信号事象候補、B+ ! K+ ! K+0 で1 つの信号事象候補を観測し、崩壊分岐比をそれ ぞれBF(B0 ! K0 ) = (2:3 2:2 0:3) 10􀀀5、BF(B+ ! K+ ) = (4:1 6:7 2:0) 10􀀀5 と 見積もった。この値は、これまでのB ファクトリー実験による世界平均と矛盾がない値である。 2
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