Belle II 実験用粒子識別装置(A-RICH)で使用 される光検出器と読み出しASICの性能評価

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Category: Master Thesis, Visibility: Public

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Authors Satoki Yoshida
Date Jan. 1, 2015
Belle II Number BELLE2-MTHESIS-2021-038
Abstract 茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構(KEK) で1999 年から2010 年まで 運転したBelle 実験は、電子・陽電子非対称エネルギー衝突型円形加速器KEKB 加速器 により大量のB 中間子対を生成し、その崩壊事象を観測することで自発的なCP 対称性の 破れの検証をはじめ、素粒子物理学における数多くの成果を挙げた。その一方でBelle 実 験では統計量によって測定精度に大きな制限を受け、標準理論を破る物理自称を観測する ことはできなかった。Belle 実験の後継実験として、標準模型を超えた新物理の探索に向 けBelle II 実験が計画された。  BelleII 実験ではKEKB 加速器はSuperKEKB 加速器へ、またBelle 検出器をBelle II 検出器へとアップグレードをすることで従来の40 倍のルミノシティを達成し、大統計を用 いて標準模型による予測からの差異を観測することで標準模型の枠組みを超える物理事象 の探索を行う。Belle II 検出器は7 つの検出器からなる複合型検出器である。その中でも Endcap 部と呼ばれる領域で荷電π 中間子と荷電K 中間子の識別を行うAerogel RICH (Ring Imaging Cherenkov) 検出器(通称:A-RICH) は、Belle II 実験で特に重要なB 中 間子のフレーバー同定において重要な役割を果たすπ 中間子とK 中間子の識別を行う 装置である。A-RICH では粒子識別可能なエネルギー領域を従来から0.5 GeV/c < p < 4.0 GeV/c まで広げることができる。A-RICH は輻射体であるシリカエアロゲルと144 チャンネルを持つ光検出器HAPD (Hybrid Avalanche Photo detector) から構成される。 荷電粒子がシリカエアロゲルを通過した際に発生するリング状のCherenkov 光を後段の HAPD でリングイメージとして検出し、粒子によって異なるリング半径の差から粒子識 別を行う。  A-RICH は合計で約6 万チャンネルを要する。それに伴い多チャンネルの同時読み出 しが可能で、各チャンネル毎の単光子検出に必要な高利得、低雑音の読み出し回路が必 要とされた。そこでBelle II 実験A-RICH 検出器開発グループは専用の読み出しASIC (application specific integrated circuit) を開発した。開発は2004 年より進められてきた が、Belle II 実験での実装を想定したASIC を試作し、その性能評価を行っていた。この ASIC は増幅器、波形整形、オフセット調節機能、比較器の機能を持ち、信号の有無とな るデジタル情報のみを出力する。  2014 年3 月に終了したASIC の量産では2520 個を作成し、その中から実機で使用する 1620 個を判定する必要がある。そのためASIC が持つ機能の性能を評価項目とした検査シ ステムの開発を行った。その結果から実機で使用する良品の判定を行った。ASIC からの 情報はヒットの有無であるデジタル情報であるが、Threshold scan という測定方法により 信号のアナログ情報を得ることができる。検査システムではThreshold scan の結果をも とにASIC の持つ機能の評価を行った。  A-RICH で使用する光検出器HAPDは2002 年から浜松ホトニクス社(株) と共同開発を 行っており、真空管内部にピクセル化されたAvalanche Photo Diode(APD) 計144 チャ ンネルが内蔵されたマルチアノード型の光検出器であり、2013 年8 月よりA-RICH 検出 器に用いるためのHAPD の量産を開始した。量産版HAPD は順次その性能評価を行って いる。測定項目はHAPD に流れるリーク電流、ノイズ量、増幅率、2 次元ヒット分布、量 子効率である。測定結果をもとにHAPD を選定し、最終的には420 個がA-RICH で使用 される。
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