Bファクトリー実験で使用する新型光検出器の放射線耐性
Category: Master Thesis, Visibility: Public
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Authors | |
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Non-Belle II authors | Wakana Mori |
Date | Jan. 1, 2012 |
Belle II Number | BELLE2-MTHESIS-2021-042 |
Abstract | 今日、高エネルギー物理学では標準理論のより詳細な検証、標準理論を超える物理事象 の観測を目標に数多くの実験が行われている。その中で、小林・益川モデルの検証、CP 対 称性の破れの起源の探索を目標に1998 年にBelle 実験が開始された。CP 対称性の破れと は、C(Charge) 変換とP(Parity) 変換を行った際に、その前後で物理法則が変わってしま うことを示す言葉である。鏡に映すような変換の仕方をP 変換、電荷が反転するような変 換をC 変換といい、C 変換を行うと粒子と反粒子が変換される。実験的にCP 対称性の破 れが最初に観測されたのは、1964 年にクローニン、フィッチらによって行われた、K 中間 子の弱い相互作用による崩壊過程の実験においてである。このCP 対称性の破れを標準理 論の範囲で説明に成功したのが小林誠と益川敏英の2 人である。二人が発表した小林・益 川理論では、当時3 種類しか知られていなかったクォークが少なくとも6 種類あれば対称 性の破れを説明できると示した。小林・益川理論によると、CP 対称性の破れはB 中間子 でK 中間子よりさらに大きく発現すると予測される。そこでBelle 実験は、電子・陽電子 衝突型加速器(KEKB) を用いて、B 中間子・反B 中間子を大量に生成し、それらの崩壊現 象を詳細に観測することからCP 対称性の破れの観測を目指した。Belle 実験は2001 年夏 にB0 → J/ΨKs への崩壊過程においてCP 対称性の破れを発見し、現在までの解析の結果 からそのCP 非対称精度は標準理論から予測される値ときわめてよく一致した。標準理論 において小林・益川理論の導入によるCP 対称性の破れの説明の正しさが示されたといえ る。また、Belle 実験ではB→ ππ やペンギン崩壊などの稀有な崩壊事象も観測された。し かし、Belle 実験の加速器・測定器の統計精度では、稀崩壊の精密な測定が困難だった。そ こで2010 年のBelle 実験終了後、後継実験としてBelle II 実験が計画されている。小林・ 益川理論の詳細な検証や、稀崩壊の精密測定、標準理論を超える新しい物理の探索を展望 にBelle 実験では加速器及び検出器のアップグレードが行われる。 B 中間子の稀崩壊事象や崩壊前のB 中間子のフレーバーの同定のためには、K中間子とπ 中間子の粒子識別が非常に重要である。Belle 検出器のAerogel Cherenkov Counter(ACC) 検出器は輻射体のAerogel から放出されるチェレンコフ光の有無でK 中間子とπ 中間子の 粒子識別を行っていたが、測定器前方ACC の識別運動量領域は0.5 ∼2.0 GeV/c となって いて高運動量領域の識別が不可能となっていた。Belle II 実験では、高運動領域の識別を 可能にするため、ACC に代わる新しいK/π 粒子識別検出器としてAerogel-Ring Imaging Cherenkov Counter(A-RICH) 検出器の開発を進められている。A-RICH 検出器へアップグ レードすることによって識別運動量領域を4.0 GeV/c まで上げることができる。A-RICH 検出器は粒子が輻射体を通過した時に発生するチェレンコフ光をリングイメージで検出し、 リングイメージの大きさから粒子識別を行う検出器で、輻射体にAerogel、リングイメー ジを観測する光検出器にはHybrid Avalanche Photo Detector(HAPD)、読み出し回路に はASIC とFPGA を併用している。HAPD は「十分な有感面積」「位置分解能」「単光子 検出」「1.5 T の磁場で動作」「放射線耐性」などの要求を満たすデバイスとして浜松ホト ニクス(株) と共同開発を行っている、真空管と4.9 mm×4.9 mm のAPD ピクセルを144 ch 持つ新型のマルチアノード型の光検出器である。 本研究では、HAPD のガンマ線耐性について調査を行った。A-RICH 検出器が影響を受 けると予想される放射線はガンマ線と中性子線があるが、中性子線については研究が進ん でいる。まだ未検証の部分の多い、ガンマ線について、60Co 照射施設にてガンマ線照射試 験を行い、HAPD への影響を調べた。Aerogel RICH 検出器はBelle II 実験10 年間の稼働 予定期間中に最大で1000Gy 程度の積算ガンマ線量を受けると予想されている。本研究で は10 年間使用してもS/N∼7 以上での一光子検出能力を保持できるガンマ線耐性を持った HAPD 開発を目標にHAPD で特にガンマ線の影響を受けると考えられているAPD 部につ いてガンマ線耐性の評価を行った。半導体がガンマ線によって受ける影響は、表面的で余 り問題にならないといわれていた。しかし本照射実験によりHAPD はガンマ線によって強 く影響を受けた。これは半導体そのものではなく、HAPD を作成するためにAPD 表面に 形成された保護膜に原因があることが分かった。そこで複数種類の表面膜を調べることで、 影響の主原因となる膜を特定した。影響の少ない膜を用いることで、Belle II 実験で10 年 間使用可能なガンマ線耐性を持ったHAPD の作成が期待できる。 |
Conference | Funabashi |
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latest upload: 2024-12-02